◆(文字を書く芸術)書の世界をしばしご一緒しましょう。(その1)
文字は点と線で形をつくって、音をもち、あるものは意味をもちます。
これから表音文字の「かな」と、表意文字の「漢字」を書いてみましょう。
書く道具を大別すると、毛筆と硬筆がありますが、線や点の変化を出すには毛筆が便利です。毛筆の場合は、ほかに墨汁と紙を使います。
書く速さや筆圧のちがい・筆の傾け方や穂先の整え方のちがい・墨量のちがい等々で、点の大小・線の太細・にじみ・かすれが変化し、書かれた文字に様々な表情のちがいと美しさが出来てきます。例えば
1.穏やかでゆとりがあり温和
2.規律正しく妥協しない
3.繊細な響きがあり軽快
4.重厚で迫力がある
5.険絶な強さ
等々人間にもあてはまるような個性を表現してみましょう。その中から自分自身の理想的な人間像や様々な人間像にふれることでしょう。
【問題】次の「一」は上記1~5のどれを表しますか?
「イチイチうるさい」などと言わずに、「ひとつひとつ丁寧に」に見て下さい。
大多数の人は イ⇒1 ・ ロ⇒4 ・ハ⇒5 ・ニ⇒3 ・ ホ⇒2と感じるようです。
◆(文字を書く芸術)書の世界をしばしご一緒しましょう。(その2)
漢字は、美しい人間の体にとてもよくあてはまって出来ています。
数字の「三」は、横線三本ですが、一本ずつ向きや長さを変えると形が整います。
これは丁度、人間の手に五本の指があっても、一本ずつ使命をもって、それぞれ長さ・太さ・向きが違っていて美しく機能しているのと同じです。
【問題】三本の線に変化をつけて、整った形になったのはどれですか?
ホは下が短い。下が長いと安定しています。横線は右アガリの方が勢いよく見えます。「右肩あがり」は調子よくいく時に使います。体全体ではウェストでちょっと細くなっていると美しい。そして変化に富んで見あきないのは「ハ」ということになります。三日坊主にならないで「三」を沢山書いてみて下さい。
【Profile】
吉村東琴
東京学芸大学書道専攻科に学んだ後、書道の普及に勤め、最盛期は都内の九校もの高等学校で書道を教えた書道家であり、現在は東京都の高等学校書道教育研究会の参与の要職にある